Frontiers in Service 2010

今年のFrontiers in Service Conferenceは6月10日から14日まで、スェーデンのカールスタッドで行われた。カールスタッドは サービス・イノベーションで著名なBo EdvardssonのKarlstad Universityがある。


会議に先立ってレセプションが行われた。ここでFrontiers in serviceの主催者 Roland RustにJSTのサービス研究プログラムの紹介を行った。将来の国際会議誘致のために、日本での活動を発信していきたい。
今回のFrontiersの初日と最終日のプレナリー・セッションは特に興味深かった。初日の最初のプレナリーでは”Reciprocal value creation through service”というタイトルで Hanken School of EconomicsのChristian Grönroosの講演があり、その後 Servie Dominant LogicのSteve Vargoとのパネル・ディスカッション。まずGrönroosの講演では、value co-creationをvalue in useを中心に見直す。彼の主張ではvalue in useの視点で見ると、顧客が価値を構築し、サービス提供者は価値のファシリテーターとなる(co-creatorではない!)。また顧客のための価値に対して、提供者のための価値の存在を指摘した。それに対して、Steveはまず、"Facilitator"もco-creationの一つてあると反論。また顧客vs. サービス提供者といった2項対立の見方ではなく、Resource Integratorとして統一的に扱うことによりサービス理論の構築が可能になると。会場からの質問も多く出て盛り上がった。
午後のプレナリーはサービス・イノベーション。スイスのLucerne University of Applied Sciences and Arts のAdrienne SchäferからヨーロッパのB2B, B2Cの製造業及びサービス業の”サービス開発の生産性と企業と顧客の組織体系の関連”についてのサーベイの報告。今後レポートが出される予定。

二日目はSkypeの研究所のDavid DinkaからExperience researchの紹介。SkypeはFree calls and video。Experience researchではmode/value/contextのフレームワークでユーザー・シテュエーションを捉える。その上でFunctional, Emotional, Basic needsとしてまとめ今後のロードマップにする。ここでの紹介はSW開発に近く、ユーザーからのインプットを元に進めるということであった。質問をしてみた。製造業のイノベーション研究ではユーザー・イノベーションとして、ユーザーにツールキットを渡しユーザー自らの拡張を可能にすることによってイノベーションを起こすことが観察されている。Skypeでは同様のことを考えているのか?その他ユーザーへのProactiveな支援(MS Officeのイルカのような)を考えているか?それに対して、今は考えていないという答えだった。
プレナリーの後、Robert Lushの”The Service eco-system: A Relevant System of Analysis for S-D logic Research"を聞きにいった。2004年にSDLがMarketing Journalで発表されてからService Unified Methodとしての位置を確立しつつある。今回の発表ではInteractivityを深堀している。Interactivityを以下の5つの要素に分解した。
  • specialization
  • modularization
  • exchange
  • transport
  • communication
またResource Integratorの機能として3C
  • coordinate
  • calculate
  • communicate
などコンセプトの整理を進めている。今後のPaperが待たれる。
その後同じ部屋でIBMのPaul Maglioの“PhysicalSymbol Systems Underlie Effective Value Cocreation".サービス・システムの定理構築を進めている。今回は定理4、メモが読めなくなってしまったが、service interactionについて。今後他の資料でフォローしよう。

この日のお昼はTekesの方とのランチョン。ご存知のようにFinlandではサービス研究に力を入れている。数値でみてみると、製造業を上回る研究費をサービスに対してあてている。また70%が大学のみではなく、企業が関わる研究。半分以上が外国との協業である。日本との共同研究もすすめられている。現在の関心事はサービス知のトランスファー。ヨーロッパワイドでEPISISとして関連研究が進められている。
午後は一緒にProjectをしていたIBMのJeanette Blombergの話を聞きにいった。CTMの研究は進んでいるようだ。その後Karlstad UnivとSteveらとの共同発表“Realizing the Service-Dominant Logic - A Practice Theoretical Perspective on Marketing Organization"。スエーデンの企業でのSDLの観察をし、SDLがマーケティング部門で実施されていることを検証した。
夕方のプレナリー・セッションは"Service Science Factories". 会場からなぜサービスに似つかわしくない Factoryなのか?という質問があり笑った。

最終日のプレナリー、今年はRoland Rustの最近の研究発表もあるということで、いつもより多くの参加者が残っていた。最初はTetra Packのサービス化の話。写真に内容をとったので明日以降Upしよう。Rolandは"Optimizing Service Productivity"の研究成果の紹介。Twitterでも紹介したが、サービスの生産性及び品質を考えた場合、サービス生産性には最適点があり、最大化することは品質低下につながる場合があるという。実際のサービスの現場で実感していることであり、サービス品質のモデル化の善し悪しは議論の余地があるにせよ今後の定式化が期待される。
2013年に日本でFrontiersを開催する可能性についてRolandに聞いた。まずサービス研究のプレゼンスを示せ!次に英語。来年度はもっと日本からの参加者、発表者が増えることを望みます。来年はUSで6月末から7月に予定されています。皆さん、いきましょう!